読売新聞の書評で圧巻のスケール感と読後感、と絶賛されていた、「最果ての泥徒(ゴーレム)」を読みました。
図書館で発見
図書館の新刊の棚でこの本をみつけたとき、思わず
「おお・・・」
とつぶやいてしまいました。
新聞の書評を見てからずっと読みたいと思っていた本。
結論から言うと、スケール感はたしかに圧巻でした。
ただ、期待値が高かった分、読後感には物足りなさも。
あらすじ
19世紀末、泥徒(ゴーレム)を主産業とする欧州の架空の小国、レンカフ自由都市の名門家に生まれた主人公のマヤには、泥徒作りにおける天賦の才能があった。
だが平穏な日々は続かず、ある日父が死体で見つかり、一族の秘宝である「原初の礎版」とともに3人の徒弟が行方不明に。
マヤは自分が作った泥徒スタルィとともに、礎版をとりもどす旅に出る。
やがて、2人は世界を2分する戦火に巻き込まれていく。
マヤが作った泥徒スタルィが使う皮肉とユーモアに満ちた言葉のセンス
スタルィは思ったことをストレートに言葉にします。
相手を笑わそうとか皮肉を言おうとかしているわけではないのだけど、なんとなくふんわりと投げかけられた問いにたいして、ど真ん中の直球がズバッと帰ってくると、投げたほうが鼻白んだり、またズバッっと投げ返したりする会話のテンポが小気味よい。
こんな面白い会話ができるスタルィが、どんなことを思ってマヤをみているのか、もっと言葉になっていたらこの物語の中にもっと深く入り込めたのにな、と少し残念に思うところはありました。
そもそも人じゃなくて、泥徒ですから、その思考がどんなふうに廻っているのか気になります。
人間とはまったく違う発想によって、もう一つの物語の世界を作ってくれたんじゃないでしょうか。
精巧に作られた歴史と世界
日本、オーストリア、ロシアなど世界を駆け巡るスケールは確かに大きい。
訪れた地の風景、人や建物や食べ物などが細やかに描かれ、くっきりとした存在を感じました。
ときは日露戦争のころで、歴史まで取り込んでます。
その辺の歴史、正直言ってあまり好きじゃなくて、学生のころあまり勉強しなかった覚えがあります。
第2次世界大戦の敗戦へと突き進む道の始まりだと思うと、なんか気がめいっちゃうんですよね。
ドラえもんが言ってました。
戦争する人たちは、みんな自分が正しいと思ってるんだって。
主人公マヤが戦う相手もまた、正義を主張します。
主張するのはいいんですが、ちょっと理解しにくい。
先日読んだ「香君」という物語の中では、敵の主張も正しいと思わざるを得ない筋がありました。
この物語の悪には、そこまでの納得感がなかったような気がします。
スタルィの人外の魅力に比べて、悪役がちょっと悪者っぽすぎて、
何言ってるんだかわからないといいますか・・・
悪者に正義が足りない、と思うのはひねくれすぎでしょうか?